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 セミナー概要  第8回~第14回

第8回 「聴覚にまつわる話」

聴覚の基礎から錯聴の話までの説明が有りました。

 錯聴では連続する音のある期間を無音にし、何も聞こえないはずの期間がどう聞こえるかの実験を行っている。その無音期間に雑音を入れると、連続していた音で補填され無音期間が聴きやすくなる実験は面白い。

 人間は音の立ち上がりに敏感である、音声の帯域別波形包絡には音声情報が含まれている、など音質評価、ハイレゾの音の違いなどに通じる説明がありました。どのように耳に入ってきた音を処理して認識するのか、簡単に整理しました。蝸牛での周波数分析、高い音が早く認識される工夫も面白い。

 FFTでは時間周波数解析に不確性原理の制約が有り、時間と周波数の両方の情報を同時に詳しく知ることが出来ない。ウエーブレット変換では高周波領域で時間分解能を高く、低周波領域では周波数分解能を高くした分析が出来るが、この処理は人間の聴覚に類似しているとの報告が有る。聴覚での神経発火頻度は振幅の大きい所で多くなる。その発火パルスの形は1bitデジタル信号の形と似ている。神経は無理に信号を早く処理したり、出力電圧を高くしたりせずにうまく行くように工夫されている。

 生体音は普通聞こえないようにしているが両耳を塞ぐなどすると聞こえる。その他にも呼吸音、筋肉音等も聞こえなくしている。

 可聴範囲と聞こえ方の変化について中島さんがまとめて図示した。可聴周波数の上限の加齢現象についてもふれ、70歳で数キロヘルツ以上での聴力レベル低下していることを示した。

第9回 「歩走遊究」

少し振り返ってみながらの中島さんの提案です。

 初めに中島さんが”バーチャルな集い“の狙いについて説明。”ワンランク上の音を極めたい“ ”音と楽しく遊びたい“その為に、その趣旨のまま2つの集いを開設します。

 ”音を極める集い“は再生音の音質を左右するスピーカの音場ひずみの改善からスタート。

 ”音と遊ぶ集い“は楽音波を用いてスピーカのエージングからワインのエージングまで。音の楽しい応用を模索する。

 特に、オーディオについてのよろず相談はNHLスタッフへ相談ください。

 そのとっかかりの為に、やってきたことの紹介をしました。“たる形スピーカ”、上方向へ360度音を放射する”サウンドプロジェクター“、たまご形スピーカに筒状のウーファーを付けた”ブラックキャンドル“、たまご形のウーファーを相似形で作った”恐竜のたまごウーファー“、響測定用の”小型12面体スピーカ“。スピーカからの振動が悪さをしているので ”吊るしたスピーカ“などです。また、スピーカの磁気回路定温化、狭い部屋での壁面近くのスピーカセッティングを狙った“拡散・吸音パネル”、音像のセンター定位を狙った“拡散マッシュルーム”、話題のフラーレン形状を取り込んだ“フラーレン形状スタンド”、”エージング&インテリア“ 参考商品ソムリの効果実験説明、ワイン以外に、醤油、牛乳、水道水、みそ汁、更には観葉植物まで、ほぼ効果ありと結論しました。手のひらでの振動効果もやりました。ちなみに音の出る振動体に触った猫は結構興味ありの様子。

 最後に中島さんの健康の為に走り歩いた39年間の記録を紹介、駒沢のウオーキング公園一周所要時間の年ごとの経過です。速度と年齢曲線から宿命線を引いた。データーの処理方法も説明されました。

 

第10回 「音像と遊ぶ」

音像と音場の関係、センター定位などの説明です。

 2ch再生で虚音像が方向と距離を持って定位することを確認した。また吉田理論として知られている、モノラルより、ステレオ再生が音の分離や豊かさ、臨場感、まで表現していると言う聴覚試験を紹介、正しい音場再生の必要性を再確認した。音場の拡がり感についてダマスケの研究が有り、相互相関係数の結果からスピーカの見込み角46度で拡がりが良くなるとしている。

 またBell研の独立通話路伝送実験を紹介し、2通話路で横方向の識別が良く、3通話路で横方向も奥行き方向も良くなるとしている。現在の2chから3chへの展開が楽しみである。

 拡がり感の定義として、“見かけの音源の幅”と“音に包まれている感じ”それと”音場を形成している室の大きさ“の3つでとらえるとしています。音での確認実験のために、センター定位のための例、吸音拡散体の例を試作し、確認試聴しました。

 中島さんは1次反射音と音像の関係を説明し積極的に反射による虚像の影響を減らすために拡散体を置くことを示しています。

 響きと音像のかかわりに触れ、20ms以内の直接音の増強と50ms以内の残響音、そしてー60dBまでの残響時間を図示し、響きへのかかわりを整理しています。両耳間の音圧と位相差も図示し、また両耳への時間差にも触れています。マイク間隔ゼロはスピーカ出力が同時に両耳に達するので自然な音場ではなくなる。ステレオ音場を作る場合の、録音時と再生時の音源からマイクの位置関係、スピーカから両耳への到達時間関係を説明し過渡域と定常域の聞こえ方にの違いを整理している。さらに、積極的に拡散体を使った拡がり感の補正、またセンター定位等に拡散体を利用した音場の作り方にまで触れている。

第11回  「HATSを用いた最新音響測定技術」

ヘッドフォン、イヤホンの測定について説明が有りました。

 音圧測定技術から、HATS4500の開発、骨伝導、ノイズキャンセリング、ハイレゾそして今後の展望と進めています。

 またヘッドフォンの音圧規制問題にも触れ、最大音圧規定、再生音圧測定法、ポータブルプレーヤーの出力電圧測定法がフランスの国内法で規定されたと説明が有りました。ヘッドフォン、イヤホンの場合測定のための各種疑似耳/イヤーシュミレータ―が必要です。

 CENELECやIECで測定用標準プラットフォームを使用した音圧測定法が定められている。従来耳介モデルでの音圧周波数特性のバラつき例が示され、改良の余地が有りそうである。

 SAMAR HATS Type4500はIECの規格に準拠し改良されている。骨伝導デバイスの測定にも触れている。加振力毎の測定結果も示している。

 ノイズキャンセリングヘッドフォン/イヤホンの測定にも触れ、測定結果例を示して説明している。また測定用疑似拡散音場の満たすべき特性にも触れ、拡散音場と測定ポイント、基準点からの音圧差の満たすべき条件などをせつめいしている。

 ハイレゾヘッドフォン/イヤホン測定にも触れ、試作SAカップラーも紹介している。測定機器例を示し、カップラーの違いによるデーターも紹介している。

第12回 「最新の音響材料、ハイレゾでの注意点、音像のまとめ」

最新の音響材料の紹介です

 最新の音響材料としては環動高分子ゲル構造のポリロタキサンを取り上げました。

 紙セルロースでは今後期待されるセルロースナノファイバーとバクテリアセルロースが繊維の細さと絡み合いの強さで面白い材料として紹介しました。密度とヤング率のグラフも示し、材料として良い方向に進んでいることを確認しました。

 高分子材料では分子鎖の長さを利用して、高速射出で配向させるとか、液晶ポリマーの配向を利用するとかの方法をしめした。

 複合材料用の素材についても触れ、フラーレン構造やカーボンナノチューブ、ウイスカー、フラーレンの製膜、カーボンナノチューブのCVC正方にも触れています。

第13回 「ハウリングの測定とTGA卵スピーカのチューニング」

NHラボ 風間;

実際の部屋でハウリングの測定をしました。スピーカ位置、マイク位置を変えながら計算での定在波の周波数を参考にハウリング周波数を周波数と音圧レベルでグラフ化しながら見ていきました。

㈱JION 宮下氏

 TGA 卵形状の優れた音場再正能力を生かし、さらに良い音を目指してチューンアップの試みです。

 チューニング事項は、吊りスタンド、スーパーツイター追加、スピーカケーブルとコモンモードコイル、ラインケーブルとコモンモードハーモニックサプレッサー、電源・ノイズ対策、パワーアンプ、音源、DACと広範囲です。

 キャビネット全体の制振にPIEZONシートを貼り、吸音材を取る。低域の空気抜きの為にFb18Hzのチューブ装着。磁気回路に定温化ユニット装着。接続ケーブルを引き込み直接接続。ケーブルはリッツ線使用。LCRフィルター部品変更(2Ω、0.069mH、7.27μF)。スタンドの防振はPIEZONシート2重巻き付け。スーパーツイーターと‐18dB/octのフィルター(0.47μF、0.022mH、1.41μF)。

 Well Float Ringによる防振。コモンモードハーモニックサプレッサー。

 まとめとして、音質向上が確認できたが、ベースモデルの完成度高く対策のCPは低い、とのコメントもいただきました。

 低音のバスレフ方式は有効。周辺機器の調整で再生音の品位が高くなり、他では得られない音場再生が出来ている。卵スピーカの持っている可能性の高さを示している。特に軽量で剛性が高い卵形状キャビネットの重要性が確認できた。今後はたまご形状ウーファーの追加、サラウンド再生の応用、たまご形状スーパーツイターが期待される。

第14回 「良い音を聴くために」

中島さん、相島技研さん、小林サウンド工房さん、NHLの説明です。

 まず、中島さんが“よい音“について、どう眺め、どこまで近づき、どのように近づけるかとしてアプローチする入口を示しました。

 スピーカがその中核であり、音場ひずみと振動、騒音の除去をする必要を説きました。

 時間と特性、NFBとサーボとDSP、響きと音像はそれぞれトレードオフの関係にあること。スピーカにおける相異なる現象の連続性と転換対応について。集中定数域からは、概念域、音圧レベル域におけるピーク波波形からランダム波形へ、キャビネット内部の特性と熱の処理、キャビネットの裏と表の音像の差、裏の音の処理、音の制作、再生、聴取、聴取室、スピーカ相互のマッチングにまで説明されました。

 スピーカのひずみを一つをとってもまだまだ解決されていない。振動板振幅特性、指向周波数特性、下限と上限の可聴範囲でのさまざまな問題を指摘されている。良い音を作るために留意すべき項目を図に整理され示している。

 相島技研からは半導体アンプを色々とやられた経験を生かして、最終的に選ばれたゲルマニウムトランジスタアンプについての説明と音出しが有りました。

 小林サウンド工房からは卵スピーカとの相性も良い、真空管アンプの紹介と音出しが有りました。

 NHLからはたまご形スピーカの特徴を説明。黄金比を使った形状、ユニット以外から音を出さない時間精度、広い帯域の正確な振動、広い指向性によるホログラム的音場感、フルレンジ一つで全可聴帯域をカバーする統一された音、などについて説明し新たまごスピーカの狙い、仕様などを説明しました。高域での特性の暴れも少ないし、何よりも指向特性が広くなっています。

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