
たまごスピーカNWシリーズ試聴記
漆黒のたまご形スピーカが我が家のオーディオ・システムに仲間入りして、まず、驚いたのは、その大きさと形状である。たまご形という可愛らしい形状と、だちょうの卵ほどの小振りさである。そして、実際に音出ししてのその音量の豊かさであった。一瞬、手持ちのブックシェルフ型のスピーカから出たものと錯覚したものであった。さらに、特筆すべきは、その音質の柔らかさであった。エッジがとれて、トゲトゲさがなくなったというか、とにかくナチュラルなのである。
当方は、音響理論にはほとんど不案内であるが、正に見た目のとおり、音に角がとれて丸みを帯びるのである。しかし、だからといって、曖昧なぼんやりしたダルな音ではない。側で聞いていた家内が、「全然気持ち悪くならない。」といったことは、オーディオに不案内のリスナーの素直な意見として真摯に受け止めなければならない。
使っていたブックシェルフスピーカの悪口をいうわけではないが、思うに、たまご形スピーカの開発コンセプトは、デジタル音源を力づくで鮮明に再生しようとする今風のスピーカの音作りと対極にあるのではないか。
当方は、主に、クラシックを専ら好んで聴いているのであるが、ピアノもまろやかになり、ヴァイオリンはしなやかに個性を発揮するようである。最近のポリーニの後期のショパンも、キョン・チョンファのバッハの無伴奏も実に心地よい具合に音色を再現する。ヴォーカルの再生も好ましい。往年のカラスやカヴァリエの声も、年月を経てもさえざえと心に響く。シンフォニーはそれなりに楽しめるし、協奏曲や室内楽では、それぞれの楽器の分離感が際立つ。
ポップスでは、中島みゆきも、石川さゆりも、声質と歌唱ぶりが手に取るように感受できて、TVなどのフラットな音で聴く演歌の平凡さとあくどさが消失する。アンプは、手持ちのROTELであるが、迫力を楽しもうとするとヴォリュームは9時位に設定しないとやや物足りない。SACDプレーヤはマランツの中級機を使用しているので、不足はないと思う。
試聴は、自宅の6畳の洋室で聴いているのであるが、絶対的な音量としては取り立てて不満はなく、しかも、ヴォリュームを下げても、クオリティは下がらず、夜間でも周囲に気兼ねなく聴くことができる。ということで、しばらく、積年に買い求めた手持ちのCDのコレクションを存分に楽しみたいと思い、さらには、余裕があれば、専用の真空管アンプを接続して聴いてみたいという誘惑にかられているところです。
終わりに、このたまごスピーカをご紹介頂き、自宅まで御足労をかけてセッティングをお願いした元会社の同僚でもある畏友の瓜生勝氏(NHラボ)に大変感謝する次第です。
千葉の佐倉市の自宅にて
M.Y.