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 セミナー概要  第21回~第26回

 

21回 「リスニングルームでの吸音拡散」

NHLが部屋の改善について説明しました。

 拡散音は音を拡散すればよいのですが、そのときに響きの良い材料で行う事で質を向上することが出来ます。また多くの部屋の場合、中低域から低域の吸音が不足します。録音時の様子を考えると、音源から放射された音は部屋中に広がっていきますので、それをマイクで拾っても限られた間接音だけの収録となり、普通は拡散成分が不足します。

 スピーカで再生する場合を見てみると、スピーカーから出た音が回析現象などによりスピーカの角で再放射され、音源が多重化しそれに引っ張られて音場が小さくなります。バッフルの大きさにより、音源が大きくなり音像がボケることを図で確認しました。また壁からの距離も、音像の大きさ、壁からの反射音の大きさを考えると、経験上最低50㎝、出来れば1mほど離すと良い。これらの経験を測定で可視化することを目的に実験を行い結果を確認した。   

 回折効果の確認の為に回折の有り無しでの特性を確認した。スピーカの至近距離では周波数特性にさほど差が見えないが、時間変化では回折有りで音量の増加が見える。セッティング位置の違いを壁からの距離を変えて見ると、周波数特性に違いが出ており、壁に近い方が特性の凸凹が大きい。減衰特性も壁からの距離が大きくなるほど減衰が早く、影響が少なくなることが確認された。

 たまごスピーカの場合、指向周波数特性も0度から90度まできれいに広がっているのが分かる。20kHzで0度と90度のレベル差がほぼ10dB以内で良い特性であることがわかる。

 センター定位の補助と拡散吸音のための各種ボードも紹介し、拡散性可変の物も紹介した。スピーカを吊り下げた場合の効果についてもデーターで確認している。

第22回  「電源の違いを楽しむ」

 

 

電源の違いと太陽光発電でアンプ駆動する実験を行いました。

 電源の違いが音質に影響することは皆様良く知るところです。そこで先ず電源の素性を調べ、良い電源での音の変化をおさらいした後、音の違う理由が何か考えました。

 太陽光発電の電源が良い音質となることは経験しているので、等価回路を見てみましたが、意外なことに電流源のように見えています。鉛電池は内部抵抗を持つ定電圧源に見える。ニッカド電池も使われるのでこれも例として確認しました。次いで電源のノイズを測定し市販のDC電源のノイズの多さを確認した。太陽光パネルのノイズ、鉛蓄電池、充電コントローラーのノイズを確認した。太陽光パネルは意外とノイズが多い事が見れる。(音を聴いた感じはしっかりとした音でノイズに悪さを感じることは無い)

 次いで、太陽光発電を使ってデジタルアンプを駆動したまごスピーカを鳴らす実験を行い、音の良さを確認した。

第23回  / 24回 「デジタル録音と最新技術、残響処理効果」

デジタル録音の先駆者ビットメディアの穴沢さんのご講演です。

 

 何時も穴沢さんの話は豊かです。スメタナ弦楽四重奏との思い出を皮切りにスタートしました。難聴とWHOのセーフリスニングに飛び、ライブなどで大音量暴露に遭遇した場合は即座に退席が重要と説明。レコーディングモニタールームではしばしば大音響でモニターしているが、それでは良い作品は生まれないと説明されました。オーケストラの演奏席でも金管楽器の前の席では大音量で耳を悪くする人も多い。

 1970年にスピーカの置き方で出来る音場再生評価の実験が行われ、効果的な配置が確認されている。

 ちょうどそのころ世界初デジタル録音のレコードが発売された。NHKのPCM/デジタル録音機が使用された。 

 レコードマスター用PCM/デジタル録音機の要求性能と達成された仕様が説明された。1972年頃、評判の良いデジタル録音として発売されたレコードであるが、初めは13ビットでダイナミックレンジは75dB  程度で有った。1980年頃は16ビットとなり、1990年頃から20ビット等の導入が始まった。1972年から92年にかけ世界各国でデジタル録音に対し賞が贈られた。

 ここで穴沢さんの大好きな名言 ”デジタルはジキタリスと知れ“。知らないで使えば劇薬、知って使えば特効薬と言う意味。

 パイヤールの意見も紹介、”モーツアルトとバッハでは響きが異ならなければならない“ ”それぞれに適した響きを持つ会場で録音すべきであり、その差異が家庭で分からないと意味が無い“。

 二人の師匠の紹介。ピーター・ブィルモースとエドアルド・ヘルツオーク。その録音秘話は面白い。

 またB&K社との新マイクロホン開発プロジェクトによるマイクも紹介。直接音でフラットか?間接音でフラットか?が面白い。これらのマイクを使用してワンポイント録音が行われた。多数マイクの場合、時間差を伴う他のマイクからの漏れが電気的に加算されると出力で櫛刃型フィルターが発生する。1985年にステージ上からの歌手の声と手前に有るオーケストラからの演奏の時間経過が客席上で同じになるように調整した、タイムアライメントミキシング録音が話題になった。

 直接音と残響音を分離するBM-1装置の紹介が有った。直接音と残響音のレベルが等しくなるステージからの距離は、大ホールで4~7m、中小ホールで3~4m、試聴室では50㎝~1m程度である。この分離装置を使った再生配置例の紹介が有った。各種のソースでデモ試聴が行われた。

 最後に、穴沢さんがやっておけばよかったと思うことの紹介が有りました。

第25回「1ビットマルチチャンネル音源を使った卵スピーカ再生」

早稲田大学名誉教授の山崎さんのお話です。

 音響信号のデータ変換と量子化雑音として量子化の手法を説明。ディザを加えることで量子化雑音を白色化するメリットを説明しました。

    次いで、ΔΣ変調の出力を示し、ノイズ分布を見ました。ΔΣ変調を用いたPCM方式とΔΣ変調を用いた高速1bit方式、ΔΣ変調を用いない高速1bit伝送のブロック図を示し比較をしました。多入力型ΔΣ変調器の例を示し説明されています。

 この後8chマルチチャンネルで横並びの卵スピーカを駆動し、素晴らしい音場の出来方を確認しました。奥行き、拡がり、定位が優れており印象的なデモでした。

第26回 「ヘッドフォンD8000の技術」

S’NEXTさんとNHラボで開発の道のりの説明です。

 

 ヘッドフォンの開発目標として“開放感と量感のある自然な低音を実現する”とし、振動板の軽量化と駆動力の広帯域化を図り、後面開放と音響回路の最適設計を実現したと説明されました。聴感評価も大切にし、数多くのヒヤリングテストとデーターの測定による物理特性の確認を行ってすすめた。

 軽量フィルム振動板はダイナミック型振動板の1/3の重量を実現。ネオジウムマグネットの対称配置により駆動力をプッシュプルとし、鉄製ヨークなしの磁気回路とした。低域の大振幅によるひずみ低減のため、薄流体層による音響抵抗を活用した。

 磁気回路の設計にはFEM(有限要素法)によりマグネットサイズ、ギャップの検討を行い最適値を求めた。ダイアフラムの軽量振動板はコルゲーション付きで同心円状の良好な動きを実現した。低域の再生帯域が伸びたことにより低密度のイヤーパッドの使用が出来、開放感溢れたサウンドにつながった。

 ダイアフラムの低域共振で良好な制振を与えるため、等価回路とレーザードップラーによる振動測定を行い薄流体層による抵抗を付加することとした。薄流体層は静電型マイクロホンなどに使われている手法で、薄く軽い振動板の制御に向いている。

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